・・・雪が降っていた。思い出の中を、真っ白い結晶が埋め尽くしていた。
数年ぶりに訪れた白く霞む街で、今も振り続ける雪の中で、俺はひとりの少女に出会った。
「祐一く?ん、こっちぃ、こっちぃ?」
「あはははは、まてぇ?、あゆあゆぅ?・・・・・・」
…………
はっ! ……どうやら白昼夢を見ていたようです。幸せな妄想に浸りすぎて、危うく凍死するところでした。…はい、こんな書き出しからご推察のとおり、私の職場、本日大雪に見舞われました。…えーと、ここは四国で、雪なんてそうそう本降りになどならないお国柄です。しかし、山間部は別の国だったようで。
なんかね、はじめはひらひらと花びらが揺れるように降ってきまして、単純に「風情があるねぇ」なんて思ってたんです。まあ30分に1度の水質検査にもまだ少し間があるし、それまでには止むだろうという、甘い考えで。……えーと、吹雪いてきました。待てども待てども止みそうにありませんが、それでも水質検査の時間はやってきます。
仕方なく事務所から外に出ると……。そこは雪国だった。と、かの川端康成も書いたような景色が。…ってのは言いすぎですが、まあ吹雪くこと吹雪くこと。水分が多い雪なので積もるところまではいきませんが、そのかわり雨のごとく体を濡らしてくれます。そのうえ風も強く、ただでさえ2℃という気温なのに、体感温度はマイナスの領域に大突入。端的に表現するなら「マジで凍死する5秒前」とか「ああ、もうとっても眠いんだ、パトラッシュ」とか「雪の八甲田山越え」とか、そんな感じ? とにもかくにも必死に耐えながら水質検査を終え、事務所へ逃げ帰り暖を取ります。
…しかし、暖を取れるのも僅かの間だけ。30分後にはまた水質検査が待っています。
相変わらず止まない雪。降りつづける雪の中、俺は、少女を待っていた。
「ねぇ…。雪、積もってるよ」
「お前が来るの遅いからだこの野郎俺を殺す気かゴルァ!!」
…………
はっ! ……どうやらまたまた白昼夢を(以下略)。という現実逃避をしつつ、再び水質検査に出たわけですが。何ですか、いつの間にぼたん雪になってますか? 舗装してあるところはともかく、畑や車には積もり始めてますよ? このときのテーマソング:「Winter fall」と「Winter Again」。いや、テーマソングっつーか、自分で歌ってたけどな。寒さで錯乱してたから。左官屋のおっちゃんにそれを聞かれてて、驚愕の視線を向けられたけど、(゜ε゜)キニシナイ!
しかし、この時の俺は、今必要なのは「Winter Again」じゃなく、むしろ「Spring Again」だろ、と思ってましたけども。春がきて、ずっと春だったらいいのに。 ちなみにこの「Spring」には、季節的な春と人生の春という2重の意味がかかっていたりしますが、まあどうでもいいことですのでさておき。春よ?、遠き春よ?(涙)
……てな事でも考えてないと 崩壊してしまいそうな自我を押しとどめることはできず、ついにその毒牙は彼の妹にも向けられたのだった。「やめて、お兄ちゃん。その人は、その人は私たちの…」(@龍虎の拳) 、寒すぎてやってられませんので、頭の中だけ春模様にしつつ、検査を終わらせて事務所へ。すると、そこで意外な話が。君、今日でクビね なんと、雪があまりに本降りになってきたので、帰れなくなる前にもう帰っていいよ、とのお達し。
な、なんだって?!!(AA略) …って、本来なら喜ぶべきところですが(あと2回残ってた水質検査が無くなったし)、時給制の俺からしたら、早く帰るという事はすなわち給料が減るってことで。それを危惧しつつも、控えめな性格で表面上だけ 通している俺は「じゃあ今日は、16時過ぎに早上がりって書いておきますねー」と申告。すると、社員の方から「いいよいいよ、定時まで仕事してたって事にしておいて」というありがたい申し出が! ありがとう!社員さん! おかげで俺は1時間何もせずに給料もらえるよ! 何度も昼飯おごってもらってるし、アンタホント最高! ヒャッホーイ!!
ってな感じで意気揚揚と帰ろうとしたのですが。金のことだけに気を取られててすっかり忘れてましたよ、雪、大降りなの。いやー、マジで前見えないくらい降ってる状況で、山道を高速走行している俺って馬鹿ですね。しかもタイヤに不安要素抱えてるってのに。あ、そうそう、とりあえず昨日の日記に書いたタイヤの話ですが、空気抜けてませんでした。完全に安心はできませんが、よきかな、よきかな。
えー、話が脱線しましたが、そんなこんなで雪降りしきる山道を複線ドリフトォッ!!@電車でD 乗り切ったあと、街中に向けて走っていたら、なんか、雪、降ってません。むしろ晴れてます。……「雲間からまぶしい光が差してきて、そのとき、僕はちょっとだけやさしい気持ちになれたんだ」なんて意味不明なポエムが浮かんできたくらいに晴れてやがります。そして、結局その後家に帰るまで、雪が降ることはありませんでしたとさ。
……あの雪と汗と涙にまみれて頑張った花園への道は! 寒さに耐えて仕事してた俺の立場はいったい……。
(ちなみに、夜になってからわが町でも雪が降り出しました。積もるような雪ではないですけど、結構大降りです。明日は道路凍ってるかもな…。鬱だ…)
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